評判の良さは流れてきていたので、見ようかどうか迷っていた作品。

なかなか見る時間がなくて、1日1回、夕方に上映するだけになってしまった作品。

「ノマドランド」。

アカデミー作品賞を取ったというので、見てきました。

そこでは、20年前の自分を思い出しました。


「ノマド」の意味は「遊牧民」

「ノマド」とは、聞き慣れない言葉ですね。
元々の意味は、「遊牧民」や「放浪者」を表していました。

ところが、アメリカでは生活に困り、車やバン、日本で言うところのキャンピングカーで実生活をする人が増えてきました。

そのような人は、季節労働者として移動しながら働くことも多く「ノマド」と呼ばれるようになったようです。

この映画は、夫を失くし、住まいを失くし、バンの中で生活をするようになった女性の話です。
原作は、実際の「ノマド」を追ったノンフィクション。

主人公は、仕事を得るためにバンに住みながら各地を回ります。

バンとは、荷物を運ぶように作られた車で、生活ができるように改造されています。
と言っても、日本で紹介されているようなキャンピングカーとは違く、もっと簡素なものです。

移動しながら、同じノマドの人たちと出逢います。

皆んなで協力しながら、ただしどこかに壁を作りながら、新しい「ノマド」の生活に慣れていく主人公。

新しい人生が始まっていきます。

帰る家がない生活をした1年半

今回の「ノマド」とは違いますが、私も帰る家のない生活をしたことがあります。

そこの期間、約1年半。

恥ずかしい話なのですが、親と話が会わなくなり、家を飛び出しました。

行った先は、南半球。

まずはオーストラリアに5ヶ月。

3ヶ月ほど英語学校に行き、2ヶ月をかけてオーストラリアを一周しました。

下の写真の、黄色い看板の左にいるのが私です。

ここは、雨季になると洪水になり冠水してしまうので「Flood Way」と書いてあります。
この写真を見るだけだと、想像できないですよね。

ニュージーランドに1年

オーストラリアの次に向かったのが、ニュージーランドです。
ワーキングホリデーで1年間滞在することが許可されました。

下の写真は、ニュージランドの港です。
今では、ホテルが出来、この景色を見ることはできません。

白黒なのは、白黒のフィルムで撮影し、自分で現像し、焼き付けまで自分で行ったためです。
ニュージーランドでは、夜間に写真を教えてくれるカリキュラムがあり、それに参加した時に行いました。

ニュージーランドでは、5万円くらいで車を購入し、車中泊をしながら1周してきました。
その時に、調理器具でつけた火傷の跡は、今でも残っています。

帰る場所のない生活

実際には、親は生きていますので全く帰る家がないというわけではありません。
それでも、簡単に帰ると言える立場でもありませんし、次男である私はそのような考えも持ちませんでした。

プログラムに書いてあった、出演もしている実際のノマドでもあるスワンスキーさんの言葉

「ノマドの暮らしを旅行と呼ぶ人もいれば、冒険と呼ぶ人もいます。
 私は、精一杯頑張って、人生を最大限まで楽しんでいるだけです。
 ノマドは、冒険をして、観光して、散歩をして、じゃあ家に帰りましょうというものではありません。

 帰る故郷はないのです。

 ノマドになって、もう10年以上になりますが、ちっとも飽きることがありません。
 家財道具一式が揃っています。
 何かを取りにどこかへ戻る必要もありません。
 ノマドでいることは、自らの選択なのです。」

確かに、色々と経験できるし、退屈はしません。
でも、どこか心に穴が開いたような感覚がずっとありました。

寂しいというのとは違います。

「ノマド」の人は、皆1人。

人と触れ合うのは、仕事か何かの集まりの中。

「ノマド」から感じる、家の大切さ

一人でいることの気楽さはあると思います。
私も、一人でいることが好きでもあります。

しかし、一人でどこまでも生きていられるかというと、どこかで助け合いも必要になります。

それが家族、なのでしょうか。

そして、家族が集う場所が家になります。

東日本大震災の時には、多くの方が家を失いました。

そして、家族が会える場所、家族が集る場所を失いました。

家づくりを仕事としていて、今回の映画は家の大切さを改めて思い出させてくれました。

家は、何かがあった時に帰れる、唯一の場所なのです。

だからこそ、いつまでも安心して住めるお家をつくることが大切と考えるのです。

帰る故郷は自分の家、
たくさんの故郷を作っていきたいです。

日本の将来はどうなる

「楽しい、」という映画では有りません。

見終わった後に、幸せになれる映画でも有りません。

今のアメリカ、格差社会を感じさせられる映画です。

株価が、最高値を更新したと伝わってくるアメリカ。

格差が広がってきている日本の将来を、この映画から感じるのは考え過ぎでしょうか。