山下和美さんのマンガ「世田谷イチ古い洋館の家主になる」が、3巻で「おしまい」となりました。

それにしても山下和美さん、本当に建築好きなんですね。

「世田谷イチ古い洋館の家主になる」

内容は、漫画家である「山下和美」さんが一目惚れした水色の可愛い洋館が解体され分譲されてしまうことを知ったことが始まり。なんとかこの洋館を残せないか、との思いから走り出します。

行政やSNS、建築会社に分譲会社、果ては○○○家まで!
いや〜、すごいバイタリティですね。

いくら好きになったとはいえ、こんなことはなかなかできません。

そして、その話をしっかりと本業で稼いでいる、という言いますかもっと稼いでいただかないと、こんなこと絶対無理ですから!

私のような建築業をしていると、このような事をすることがどれだけ大変か身をもってわかっているので胸が苦しくなります。

今はいないかもしれませんが「土地を売らんかい!」と脅すように言われたこともあります。家づくりをした人なら誰でも知っているような大きな会社の不動産担当の人にデス。

まだまだ、このような土地売買はドロドロなところもあるのでしょう。それを商売にしているのですから、致し方ないところもあるとは思いますが。いえいえ、仕方ないなんて事は絶対にありませんから!

今回はそこまではいかないようですが、土地には購入する会社の都合や販売する方の都合もあるのでより複雑です。

それでも残せるなら。

鈴木京香さんも「ヴィラ・クゥクゥ」を

最近、同じように取り壊しの危機にあった貴重な建物を購入した人がいます。

それが女優の「鈴木京香」さん。

近代建築の巨匠・コルビュジエに師事した建築家、吉阪隆正が設計した「ヴィラ・クゥクゥ」を購入しました。

私も写真で見ましたが、コルビジェの「ロンシャン礼拝堂」をオマージュしたような可愛い作りの素敵なお家です。

最近の建物と比べると、寒くて暑くて実際に住むには大変な事は間違いなさそうですが、それとこれとは別な話なのです。

それにしてもすごいのが、その費用。

土地面積は60坪くらいなのですが、土地の坪単価が500〜600万円なので土地代だけでも3億円!まさに、宝くじでも当たらないと無理!という金額です。

とは言え、税金と補修費用さえ支払ればなんとかなるのかもしれません。いつでも売れるような土地でしょうから。

2023年9月9日から見学できるように準備しているだそうです。

なかなかの人気スポットになりそうですね。

参照:GoogleMapより 2023年6月6日

GoogleMapで見ると思ったよりも狭い。そこにあれだけの空間を作るのがさすがですね。

鈴木京香さんは、今回のことが評価され日本建築学会の文化賞に選出されています。

名建築を残す活動をしている「住宅遺産トラスト」

建物は、建て替えられていくものだとも思っています。しかし、それが全てではないはずです。

そこで、貴重な建築を残すべく活動しているのが「住宅遺産トラスト」です。現在、ホームページには25の建物が掲載されています。

古い建物は1923年から、新しい建物は2001年の堀部安嗣さんの建物まで。まだ、20年足らずで解体されてしまう建物も少なくないのかもしれません。

ちなみに鈴木京香さんの「ヴィラ・クゥクゥ」は、「住宅遺産トラスト」で見つけたそうです。

先日は日本経済新聞に「伊藤邸(旧園田高弘邸)」が紹介されていました。この伊藤邸も「住宅遺産トラスト」に載っています。

山下和美さんといえば「天才柳沢教授の生活」

山下和美さんと言っても、ピンとこない方も少なくないと思います。私は結構昔からこの方の漫画は読んでいてました。そのきっかけが「天才柳沢教授の生活」です。テレビドラマにもなったので、ご存じの方も多いかと思います。

その頃の作品からは建物好きな感じ間全くしませんでした。

その後の「ランド」も、そのような雰囲気は感じられませんでした。

ところが、ある時に出版されたのが「数寄です!」。

なんと、山下和美さんが、東京都内に数寄屋造りの家を建てるという、荒唐無稽?の漫画となっていました。

数寄屋造というと、私も詳しくは話せない程に形があります。費用も桁違いになってきます。簡単に建てられるお家ではないのです。

山下和美さんも、どこかで建築の沼にハマってしまったようです。